2014年9月18日木曜日

スペインの旅 聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ その1

僕は無神論者なのだが、教会や寺、そしてそこに集まる人々には興味がある。


今回、聖地と言われる場所に来るのはバチカン以来2度目だ。


なぜかちょっと張りつめた心境を感じながら、滞在していたア・コルーニャから
鉄道でサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう。


サンティアゴ(Santiago)はスペイン語で聖ヤコブのこと。


聖ヤコブは新約聖書に登場するイエスの使徒の一人であり、
使徒ヨハネの兄弟で「大ヤコブ」とも言われている。


9世紀、その聖人として崇敬されているヤコブの遺体とされるものが、
奇跡的にこの地で見つかったのだ。


当時、イベリア半島はレコンキスタの真っただ中。

イスラム教徒と戦っていたキリスト教徒にとって、戦いを動機付ける強力なシンボルとなって、
崇められた。


それ以来、キリスト教の3大聖地として、多くの巡礼者がこの地を訪れるようになった。

巡礼路エル・カミーノも整備され、要所には修道院が置かれ、それと共に無料や安い宿も
できてきた。


現在、主な巡礼路はフランスの南西部からピレネー山脈を越えるルートだ。

僕はピレネーを車で越えたことがあるが、思ったより緩やかで、
徒歩か自転車でないと正式な巡礼者と認められないというのも納得した。

毎年、数万人が巡礼すると言われているが、皆、聖ヤコブのシンボルである
ホタテ貝の貝殻と水筒代わりのひょうたんをぶら下げている。



フランス語で帆立貝のことをコキーユ・サンジャックと言うのだが、
サンジャックとは聖ヤコブのこと。

なぜかスペイン語では"vieira"ビエイラ。

ヤコブと全く関係ないようだ。(笑)



駅を降りて、なんとなく人の流れに着いて行くと旧市街へたどり着いた。

通り沿いには、この街の名物の菓子「タルタ・デ・サンティアゴ」が売られている。

これは、中世から伝わるシンプルなアーモンドケーキで、その名の通り
「聖ヤコブのケーキ」という意味だ。



中身には、砕いたアーモンド、卵、砂糖等で作ったフィリングが詰められ、
表面にはパウダーシュガーがまぶしてあるのだが、その中心は聖ヤコブの
十字を型抜いてある。


スペインのお菓子やデザートは殺人的な甘さのものが多いのだが、
食べてみると、意外と食べられる(失礼!)甘さで飽きの来ない美味しさを感じた。




旧市街の街並みを楽しみつつ歩いていくと、通りの間から大聖堂の荘厳な姿が見えてくる。

カトリック教徒でなくとも、何か感慨深い。

辿り着いた巡礼者の中には感動して泣いている人たちもいた。





恐る恐る中に入ってしばらくすると、ちょうど聖ヤコブを祝うミサが始まった。


天井には大きな滑車が取り付けられていて、そこから重さ80キロもあるボタフメイロ
(銀の香炉)が吊るされている。

それが巨大な振り子のように煙を振りまきながらスイングされるのだ。

その光景は大迫力!




古くから巡礼者たちはその煙に清められ、その香りで癒されてきたのだろう。


しかし、実は、大勢の巡礼者たちの汗臭さを消すために大きな香炉で香りを
振りまいたという現実的な一面もあったようだ。



僕は無神論者と言いつつも、教会には惹かれるものを感じる。

なぜか僕のような者でも神聖な気持ちにさせる独特の空気感とひんやりとした緊張感。


そして何よりも、身体全体が包み込まれるようなパイプオルガンの幻想的な響き。

昔の事だが、初めてそれを聞いた時には感動して身体が震えたのを覚えている。


つづく




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